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LILEAPコラム

多嚢胞性卵巣症候群は、どんな基準で診断し、どう管理するのでしょうか?

月経が何か月も来なかったり、あごのまわりに太い毛が増えたりして受診したところ、「多嚢胞かもしれません」と言われると、気になることがたくさん出てきます。超音波の画像一枚で決まったのか、なぜ血液検査をするのか、これからずっと薬を飲まなければならないのか、といった疑問です。

略して「多嚢胞」とも呼ばれるこの状態は、名前とは違い、卵巣に嚢腫ができる病気ではありません。排卵とホルモン、体の代謝が互いに関わり合っているため、診断も複数の手がかりを照らし合わせる方法で行います。最近、英国のNHSなど一部の海外の公的な健康情報では、複数のホルモンと代謝が名前に表れるよう、PMOS(polyendocrine metabolic ovarian syndrome)という新しい英語名を使い始めています。この記事では、なじみのある名前である多嚢胞性卵巣症候群をそのまま使います。以下では、診断基準と検査の意味、診断後に続く管理を順に整理しました。

医師が、縁に沿って小さな卵胞が並ぶ卵巣のイラストを指しながら診断を説明し、顔の見えない女性が聞いている場面を表した説明用の生成画像

多嚢胞性卵巣症候群は、どんな基準で診断しますか?

成人では、下の三つの特徴のうち二つ以上が確認され、似た変化を起こすほかの原因を除外できたときに診断します。 2023年に改訂された国際的なエビデンスに基づくガイドラインもこの枠組みを保ちつつ、卵巣の所見を確認する方法に血液検査を加えました。

診断に使う特徴何で確認しますか
排卵障害月経の間隔が長すぎたり短すぎたりしないか、一年間の月経の回数が少なくないかを、記録と問診で確認します。周期が規則的でも排卵がうまくいっていないことがあるため、必要に応じて血液検査で確認します。
男性ホルモンが多いサイン体や顔の太い毛(多毛症)、にきび、頭頂部の髪が細くなる変化を診察し、血液で男性ホルモンの値を確認します。
多嚢胞状の卵巣超音波で片側の卵巣の小さな卵胞の数と卵巣の大きさを確認するか、成人ではその代わりにAMHの血液検査を使うことができます。

三つすべてがそろう必要はありません。そのため、同じ診断名でも、月経の変化が目立つ人、毛や肌の変化が中心の人、両方がある人など、現れ方はさまざまです。

男性ホルモンのサインのうち、太い毛が増える変化は比較的意味のある手がかりと考えます。にきびや髪の変化だけの場合はほかの原因もよくあるため、ほかの特徴と合わせて判断します。脱毛やスキンケアを続けてきた場合は診察で目立ちにくいことがあるので、もともとの毛の状態を伝えてください。

ほかの原因をなぜ先に確認するのですか?

月経が止まったり毛が増えたりする変化は、多嚢胞性卵巣症候群以外の原因でも起こるためです。 治療の方向がまったく異なる病気を見逃さないよう、診断の過程に除外の段階が組み込まれています。

まず妊娠の可能性を確認します。続いて症状に合わせて、甲状腺の働き、乳汁の分泌に関わるプロラクチン、脳と卵巣の間の信号、副腎でつくられるホルモンなどを確認します。無理な食事制限や強度の高い運動で月経が止まった場合も、多嚢胞性卵巣症候群と区別する必要があります。

短期間で毛が急に増えたり、声が低くなるなど変化が急に進んだりする場合は、単に多嚢胞と考えて済ませません。男性ホルモンを多くつくるほかの病気がないか、急いで確認することをおすすめします。

超音波とAMH、血液検査はそれぞれ何を教えてくれますか?

それぞれの検査は三つの特徴のうちひとつについての情報を与えるだけで、単独で診断を下すものではありません。 不規則な月経と男性ホルモン過剰がすでに両方確認されている場合は、診断のために超音波やAMH検査を追加する必要はありません。

超音波では、卵巣の中に小さな卵胞が基準より多くあるか、卵巣が大きくなっていないかを確認します。経腟超音波が最も正確ですが、希望しない場合や性経験がない場合は、ほかの方法を相談できます。超音波では子宮内膜の厚さや形もあわせて確認できます。ただし卵巣の形は三つの特徴のひとつにすぎないため、この所見だけでは診断しません。

AMH(抗ミュラー管ホルモン)は小さな卵胞がつくるホルモンで、成人では超音波の代わりに卵巣の所見を判断するのに使えます。年齢や体重、最近の経口避妊薬(ピル)の服用、検査日によって値が変わることがあるため、単独の検査としては使いません。過剰診断を避けるため、超音波とAMHの両方を行う必要はないとされています。不妊相談で使う「卵巣年齢」の解釈とは目的が異なる点も知っておいてください。

男性ホルモンの血液検査は、毛やにきびのような外から見えるサインがはっきりしないときに特に役立ちます。ピルを服用中だと値が低く出ることがあるため、結果の解釈ではその点を考慮します。

インスリン抵抗性は多嚢胞性卵巣症候群の重要な背景として知られていますが、診療でよく使われる測定法は精度が低いため、診断のために別途測ることはしません。その代わり、診断時に血糖の状態を確認し、その後も定期的に確認します。

思春期ではなぜ違う見方をするのですか?

初経後の数年間は排卵が整っていく途中のため、月経が不規則だったり卵巣に卵胞が多く見えたりすることがよくあるからです。 成人の基準をそのまま当てはめると、正常な成長の過程を病気と誤解するおそれがあります。

そのため思春期では、年齢に合った基準で判断した不規則な月経と男性ホルモン過剰がそろっているときに診断を検討します。超音波とAMHは思春期では見分ける力が低いため、診断には勧められていません。

特徴の一部だけがある場合は「リスクが高い状態」と考え、体が成熟したあとに改めて評価することもあります。診断を急ぐか待つかは、本人・保護者と一緒に、いまのつらさや心の負担まで考えて決めます。ピルなどのホルモン剤を始める前の状態を記録しておくと、あとで再評価するときに役立ちます。

診断後は何をあわせて確認しますか?

月経の問題だけでなく、子宮内膜、代謝、睡眠、心の健康まで長い期間にわたって確認していきます。 多嚢胞性卵巣症候群は、短い治療で終わる状態というより、人生の段階ごとに管理の目標が変わっていく状態です。

  • 月経が長く来ないときの子宮内膜 排卵がないと子宮内膜を整えるホルモンが不足し、月経が長く来ない間に内膜が厚くなり続けることがあります。子宮内膜増殖症や子宮内膜がんのリスクは高まりますが、実際に起こる可能性自体は低いほうです。そのため、定期的に出血を起こしたり、ホルモン剤で内膜を守ったりする方法を相談します。内膜が厚く見えたり出血のパターンがおかしかったりする場合は、組織検査を検討することもあります。
  • 血糖と代謝 体重に関係なく、糖尿病予備群や糖尿病のリスクが高まることがあるため、診断時とその後も定期的に血糖を確認します。血圧とコレステロールもあわせて確認します。
  • 睡眠と気分 いびきや日中の強い眠気があれば伝えてください。うつや不安を感じることもよくあるため、気分の変化や見た目についてのつらい気持ちも、診療で話していただけます。
  • 妊娠を計画しているとき 妊娠中は血糖や血圧に関わる合併症により注意が必要になるため、妊娠の準備をしている場合は事前にお知らせください。

体重は管理項目のひとつにすぎず、この状態の原因やご本人のせいと考えるものではありません。やせ型の体型でも多嚢胞性卵巣症候群は起こります。体重の話をしたくない場合はそう伝えていただいてかまいません。食事・活動・睡眠で長く続けられる目標から一緒に決めていきます。

管理の方向はどう決めますか?

いま最もつらいことは何か、そして妊娠を望んでいるかによって優先順位が変わります。 ひとつの薬ですべての症状を一度に扱うのではなく、目標ごとに分けて計画します。

最も気になることあわせて検討する方向
月経が不規則、または長く来ない月経周期を整え、子宮内膜を守るホルモン剤(複合経口避妊薬、黄体ホルモン剤など)を、個人のリスク要因とあわせて検討します。
にきび・毛・髪の変化ホルモン治療、皮膚の治療、レーザー脱毛などの方法を、症状の程度や望む結果に合わせて相談します。毛の変化は、効果を判断するのに数か月かかることがあります。
血糖・代謝のリスク生活習慣の管理を土台に、必要であればインスリンの働きを助ける薬もあわせて検討します。
妊娠を望んでいる排卵の有無に加え、卵管・子宮、パートナーの検査などほかの要因も評価し、必要に応じて排卵を助ける治療や不妊治療の専門診療につなげます。

ホルモン剤は血栓のリスクなど個人の健康状態を確認したうえで使い、よくある副作用や注意点は薬ごとに異なります。毛を減らす薬の中には、妊娠中に胎児へ影響を与えうるものがあるため、確実な避妊が必要です。そのため、妊娠の予定ができたり変わったりしたときは、いま使っている薬が引き続き適しているか改めて相談してください。

治療で症状が良くなっても、薬をやめると再び現れることがあり、目標が変われば計画も変わります。一度治療して終わりというより、月経、肌、代謝、妊娠の予定を定期的に見直しながら調整していく過程だと考えてください。

診断の流れと管理の目標は、LILEAPの多嚢胞性卵巣症候群の診療案内でもあわせてご確認いただけます。月経の記録を持って受診したときにどんな順番で確認するかは、コラム月経周期の変化を確認する診療の順番にまとめています。

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