性交を終えたあと、下腹部が重く引っ張られるように感じたり、片側の奥がチクチクと痛んだりする日があります。話しにくさから「少し休めば治るだろう」とやり過ごしがちです。性交中や性交後の痛みは思っているより多く、受診の場で十分に相談できる症状です。米国産科婦人科学会(ACOG)は、女性の四人に三人近くが、生涯のどこかで性交時の痛みを経験すると案内しています。
この記事では、性交後に下腹部や骨盤の奥に残る痛みを取り上げます。腟の入り口のひりつきや乾燥による不快感は腟の乾燥と性交痛で、性交と関係なく起こる下腹部の痛みは生理の時期以外の下腹部の痛みで別にまとめています。

入り口の痛みと奥の痛みは違うのですか?
はい。痛む場所によって、最初に確認する原因が変わります。 性交時の痛みを性交痛と呼び、最初に触れる腟の入り口のあたりが痛む場合と、深く入ったときや性交後に下腹部・骨盤の奥が痛む場合に分けて考えます。
入り口の痛みは、乾燥や皮膚への刺激、腟炎など、外側に近い原因と関係していることが多いです。一方、奥の痛みや性交後まで残る骨盤痛では、子宮・卵巣・卵管など骨盤内の臓器の状態もあわせて確認する必要があることがあります。両方が同時にあることもあるので、まずはどちらがよりつらいかを思い浮かべてみてください。
何を書き留めておくと受診に役立ちますか?
痛みそのものよりも、痛みの様子がわかる情報が原因を絞り込む助けになります。 スマートフォンのメモに短く残しておけば、受診時に口に出しにくいことも、そのまま見せることができます。
- いつ痛みましたか? 性交中に深く入ったときからか、終わった直後か、数時間後に始まったかを書き留めます。
- どこが痛みましたか? 右・左・真ん中のどこか、腰や肛門のほうへ重く広がったかを書き留めます。
- どのくらい続きましたか? 数分で治まったか、翌日まで残ったか、時間とともに強くなったかを残しておきましょう。
- 出血やおりものの変化はありましたか? 性交後に血がにじんだか、おりものの色・におい・量がいつもと違ったかを確認します。
- 発熱や、体の節々が痛む感じはありましたか? 体温を測ったなら数値を、寒気や吐き気があったかも書き留めます。
- 生理周期のどのあたりでしたか? 前回の生理開始日、生理が遅れていないか、使っている避妊方法もあわせて書き留めてください。
- 毎回そうなりますか? 性交のたびに痛むのか、特定の体位や時期だけ痛むのか、生理痛や排便・排尿時の痛みもあるかどうかも参考になります。
性交後に下腹部が痛むのはなぜですか?
原因はひとつに決められず、軽く済むものから治療が必要な病気まで幅広くあります。 深い接触で骨盤が一時的に刺激されて重だるくなり、すぐに治まって繰り返さないのであれば、大きく心配しなくてよいことが多いです。ただし、次のような背景もありうるため、繰り返す場合やほかの症状を伴う場合は確認が必要です。
| 考えられる背景 | あわせて確認したいこと |
|---|---|
| 排卵前後 | 次の生理の約2週間前に、下腹部の片側が鈍く、または刺すように痛み、たいてい数分から一両日のうちに治まります。 |
| 卵巣の嚢腫 | ほとんどは症状がありませんが、大きい場合や破裂した場合、卵巣がねじれた場合には、性交時の痛みや突然の強い痛みが起こることがあります。排卵後にできる黄体嚢胞が破れて、お腹の中に出血することもあります。 |
| 骨盤内炎症性疾患 | 主にクラミジアや淋菌などの性感染症が子宮や卵管へ広がって起こり、奥の痛み、生理と生理の間や性交後の出血、おりものの変化、発熱が現れることがあります。症状がない、または軽い場合もあります。 |
| 子宮内膜症 | 強い生理痛とともに、性交中や性交後の痛み、排便・排尿時の痛みがあることがあります。 |
| 妊娠に関係する場合 | 子宮の外に成立した妊娠(子宮外妊娠)は、下腹部の片側の痛みと、いつもと違う出血として現れることがあります。 |
| 腸・膀胱 | 便秘や膀胱炎など、子宮・卵巣以外の原因が性交後により不快に感じられることもあります。 |
この表は理解を助けるための分類にすぎず、症状を照らし合わせて自己診断するための表ではありません。手術後の癒着のように表にない原因もあり、二つ以上が重なることもあります。生理のたびに痛みが強くなっている、または変わってきている場合は、繰り返す生理痛・骨盤痛の原因もあわせてお読みください。
どのような場合にすぐ受診すべきですか?
痛みが急に強くなった、だんだん強くなっている、発熱や多量の出血、めまいを伴うといった場合は、「もう少し様子を見る」よりも受診が先です。 妊娠の可能性があり、下腹部が痛む、または出血がある場合は、検査薬の結果にかかわらずすぐに確認してください。
緊急ではなくても、次のような場合は先延ばしにせず受診してください。
- 性交のたびに奥が痛む、または同じ痛みが何度も繰り返すとき
- 鎮痛薬を飲んでも治まらない、または翌日まで続くとき
- 性交後の出血や、いつもと違うおりもの・においがあるとき
- 生理痛が以前より強くなった、または排便・排尿時にも痛むとき
受診では何を確認しますか?
まず書き留めてきた内容をもとにお話をうかがい、必要な検査を選んで原因を絞り込んでいきます。 すべての人が同じ検査を受けるわけではなく、一度の受診ですぐに原因がわからないこともあります。
- お話をうかがう: 痛みの時期・場所・続いた時間、生理と避妊、最近の性的接触、これまでの感染症や処置の経験をお尋ねします。
- 妊娠の確認: 妊娠の可能性があれば、まず確認します。妊娠しているかどうかによって、確認する原因が変わるためです。
- 診察: お腹と骨盤を診て、必要に応じて腟の中を診察し、どこを押すと痛むかを確認します。診察中につらいときは、いつでも止めてほしいと伝えてかまいません。
- 感染症の検査: おりものの検体で、クラミジアや淋菌などの感染の有無を確認します。
- 超音波検査: 子宮と卵巣の形、嚢腫やお腹の中にたまった液体がないかを確認します。状況によっては血液検査もあわせて行います。
治療は、確認できた原因に応じて決めます。たとえば骨盤内炎症性疾患が疑われれば抗菌薬による治療を始め、原因となった感染症に応じて、パートナーの受診や性交を再開できる時期についても案内を受けます。症状が良くなっても、処方された薬を自己判断でやめないでください。診察と超音波検査で原因がはっきりしないまま痛みが続く場合は、追加の検査ができる医療機関につないで、さらに原因を調べることもあります。
原因がわかるまでは、痛いときに性交を休んだりやめたりするのも自然な選択です。痛みを我慢して続けるよりも、まずは体のサインに目を向けてください。骨盤内炎症性疾患の診療の流れはLILEAPの骨盤内炎症性疾患のご案内に、感染症の検査項目は性感染症検査のご案内にまとめています。
